みつるの読書部屋

いのち短し読書せよ大人!

『スクリプトドクターのプレゼンテーション術』(三宅隆太/スモール出版) ― プレゼンは日々に宿る

プレゼンとは

こんばんは、扇町みつるです。

皆さんはお仕事でプレゼンテーションはしていますか?パワポでスライドを作ったり、ワードなどで原稿を作ったり…。

私はしていません。もくもくと作業する系の仕事なので、人前でスピーチするということは仕事ではしません。

なので、あえてプレゼンテーションに関する本を読む必要も無いのですが、何かの商品の売り込みみたいなことではなくても、仕事の面接などで何かしゃべったりするようなことは、これからの人生でまだ何度かあるでしょうし、読んで損することは無だろうから、と手に取ったのが『スクリプトドクターのプレゼンテーション術』(三宅隆太/スモール出版)でした。

 自意識、自己開示

本書は、著者が行った講演を文字起こししたものです。なので、喋り言葉で書かれていて読みやすいと思います。前半は「プレゼンとは対話である」ということを、後半は「プレゼンに大事なのは自己開示である」ことを著者のユニークな視点で説いています。

スライドはこのように作りましょう、といったテクニック面ではなく、プレゼン(人に何かを伝えること)においての己の精神面について書かれています。

なので、普段からプレゼンや人前のスピーチに慣れている方ではなく、そういう経験に乏しくむしろ人前でアガってしますような方こそ読むべき内容になっています。

 

なぜ人前で何かを話そうとするとアガってしまうのか。これは長年の私の悩みです。この問題のおかげで出来なかったこともかなりありますし、社会的に挫折もしました。

本書はそんな悩みに対する一つのアンサーを提示してくれました。

実は、プレゼンが苦手だと感じている方の多くが、「プレゼンという場」に立たされることで、目の前にいる相手に、つまり「聴き手」に意識を向けるのではなく、「伝え手」であるべき自分に意識を向けてしまうのではないか。自分が置かれたシチュエーションや状況のせいで平常心を失い、「失敗したらどうしよう」「間違ったことを言ってしまわないだろうか」あるいは「恥をかきたくない」といった具合に、反射的な思考に陥ってしまうのではないか。
つまりは、「自意識」が発動してしまうのではないかと思うんです。

<中略>

この自意識というのは、一見すると相手への配慮のようですが、実は利己性によるものだとぼくは思います。

<中略>

「相手からこう思われたくない」とか「ああ思われたくない」というのが正直なところで、実際には自分のほうを向いてしまっている。でもそのことに気づかない。
つまりは、「利己性」以外の何者でもないわけです。

 人がどう見ているか、人にどう見られているか、ではない。アガるメカニズムを自分で勝手に自分の中に作っちゃっているんです。

これが今回、本書を読んだことによって得られた気づきです。

スピーチやプレゼンに慣れている方にとっては「当たり前じゃん」なことだらけかもしれませんが、人前でなにかしようとするとアガってしまう方や、人とのコミュニケーションが苦手だという方にとっては、どうすればその辛さから開放されるかのヒントが書かれているので、そういう方にぜひとも読んで頂きたい一冊です。

本書は「プレゼンテーション術」となっていますが、人との「コミュニケーション術」と言ってもいいでしょう。

スクリプトドクターのプレゼンテーション術 (DIALOGUE BOOKS)

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もくじ
 
なぜあなたは、プレゼンを難しいと感じてしまうのか?
 
第1部 プレゼンとは対話である
プレゼンは日々の生活の延長線上にある/プレゼンは人数に関係なく「対話」である/思い込みが不安を生む/プレゼンの主役は「する側」ではなく「される側」/最大の邪魔は「自意識」/緊張はしているけど、アガってはいない/「チョコ、バナナ」ゲームをやってみる/今度は「好き、嫌い」ゲームをやってみる/自分と関係のある言葉として語る/役者が「好き、嫌い」ゲームを続けるとどうなるか/魅力的な特徴を目の前の相手に伝えてみると…/3つのゲームを通じて分かること/プレゼン術、5つのトピック/『タマフル』との出会いは「岡田有希子」さん/アイドルとの関わりで気づいたこと/ラジオから流れてきた『花のイマージュ』/嘘をつかないことを『タマフル』から学んだ/驚くほど広かった『タマフル』の受け皿/あなたの資質はグランプリなのか、審査員特別賞なのか/審査員特別賞でも、あなたらしくあればそれでいい
 
第2部 自己開示こそがプレゼンの真髄となる
脚本にとって重要なのは、台詞より構成/構成を細かく意識しすぎると、うまくいかない/言いたいことを言うだけなら、ただの独り言/ポピュラーソングの「転調」からヒントを得て/「転調」はクリエイティブな飛躍のチャンス/ポピュラーソングから構成を学ぶ/認知のズレを生むのは「前提の持ち込み」/決めつけを解消する方法は自分を疑うこと/大切なのはシステムよりも共感/的外れな意見を言われたら、その発言の原因を探ってみる/怒っているように見える人は、案外傷ついていたりする/自分を疑うことで「他人の眼差し」に近づいていく/あるオーディションで起こった「前提の持ち込み」/プレゼンの考え方は小説ではなく「新聞の見出し」/大切なのは「余白」を作っておくこと/加藤あい主演の予定が、○○に変更!?/むかつく相手のことばかり考えると、かえって過剰な価値付けをしてしまう/三宅隆太がアガってしまうシチュエーション/空気を読もうとすると自分の役割を見失ってしまう/聴衆をジャガイモと思い込んではいけない/リアクションを引き出すためにユーモアを/緊張は声に表れる/第三者としては見えていても、演者になると見失うもの/放送で犯した最大のミス/失敗から得た教訓は…/自分の声は嫌いだった/息は自らの心である/大事なのは良い声を出すことではなく「自分らしい声」を出すこと/自己開示と自己主張は別モノ/自己開示には不安がつきもの/『クロユリ団地』はいかにして”心霊映画”になったのか/過去に執着すると心の時間が止まってしまう/なぜ小学校には怪談があって、幼稚園にはないのか/幽霊が見えてしまうのも、個性として受け入れてくれた/個人の認知は不可侵な領域である/あなたがあなたであることに、すでに価値がある/決めつけを減らして自己開示をすると、生きやすくなる/「プレゼンとは目的ではなく手段である」
 
第3部 参加者との質疑応答
Q.プレゼンのタイトルはどうやって考えている?/Q.三宅隆太が出会った、プレゼンがうまいひととは?/Q.自己開示にも種類があるのでは?/Q.多人数を前にしても、自意識過剰にならないためにはどうしたらいい?/Q.プレゼンする側とされる側。知識や関心の差をどう埋める?/Q.脚本と小説は違うもの?/Q.上司にキャラを決めつけられ、マウントされてしまう。どうしたらいい?/Q.自分らしさを意識すると、マイナス面ばかり見てしまう/Q.『タマフル』が終わるとしたら……どんな後番組が聴いてみたい?
 
おわりに