みつるの読書部屋

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『わたしのおせっかい談義』(沢村貞子/光文社文庫) ― 今もなお光るエッセイ

こんばんは、扇町みつるです。

沢村貞子という女優

皆さんは、沢村貞子さんという女優さんをご存知でしょうか?私は、なんとなーくお名前は聞いたことあるような無いような…(要は知らない)という状態でずーっと来て、しっかり認識したのは昨年、黒柳徹子さんのドラマが放送された時でした。

 

沢村貞子さんは明治41年浅草生まれ。まだ庶民は女子の高等教育に対して消極的で、というか男子でさえも小学校を出たら働くことが普通だった世代でありながら、家庭教師などをしながら女学校を出て大学まで行った才媛です。

 

また、卒業後は新劇の劇団に入り、当時施行されていた治安維持法に触れ逮捕された経験もある気骨ある女性でもあります。

私が生まれた頃には既にベテランの女優さんとなっており、エッセイも出しておられました。

 「わたしのおせっかい談義」

今回読んだのは『わたしのおせっかい談義』(沢村貞子/光文社文庫)です。本書は、講演会で話した内容を文字起こしして出版したもののようで、しゃべり言葉でとても読みやすく、私はドラマなどで沢村さんを見た記憶はありませんが、着物を着た凛とした女性が話しているところが浮かびました。

 

子供の頃の話から始まり、家庭教師をしながら通った女学校・大学時代、劇団時代、そして女優になってからの話に続きます。お料理の話や着物の話にはそれぞれ一章ずつ割き、最後に、年齢相応の生き方の話で締めくくられます。

 

明治の生まれでありながら、大学で学んだせいか、とても先進的な女性だと思いました。それでありながら、女優の仕事をしながら家事もしっかりこなし、愛する旦那様のお世話を甲斐甲斐しく焼いておられました。

 

「子供の頃から家事を仕込まれた」らしく、お手伝いさんはいたものの、家にいるときは家事はしっかりこなしたようです。特に食へのこだわりは強く、お料理の腕前はかなりなものだったよう。毎日の献立を記録していて、その「献立日記」も出版されています。

お料理や着物についての話は、丁寧に暮らしたい、日常に和服を取り入れたいという方には十分参考になると思います。

わたしのおせっかい談義 新装版 (光文社文庫)

わたしのおせっかい談義 新装版 (光文社文庫)

 

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目次
 
第一章 自ら選んだ脇役の道
どちらが本物の私?/家では主役脇役の兼用/年にさからわず、欲張らず/台所が私の運動場/手作り弁当が潤滑油/夫婦間の空気孔/何にでも興味を持つこと/人間っておもしろい/私は感心魔/「お互い様」の気持ちで/思ったことの言える世の中に/人間として生きやすい雰囲気/優秀ってなあに?大人が甘ったれちゃう時代
 
第二章 幸せ願望のつまづき
筮竹一本で決まった私の名前/私の父親/「おまけ」の心意気/私の母親/女子大へ/卒業間際に退学/新劇運動で監獄へ/脇役にしてください/トーキー初期の思い出/大学出の女優/前向き七十点、横向きは……/脇役人生のコツ/時間厳守とセリフ覚え/年より若く見える秘訣
 
第三章 食べることの楽しさ
やわらかいトマト/ヘボ胡瓜と四角い西瓜/私の”献立日記”/一年前の献立/教える料理と教わる料理/料理に変化をつける/食卓の変化/おいしく食べるには/二人で一丁の冷ややっこ/一年じゅう旬の青豆/盛りつけの工夫/「ふろふかず大根」の知恵/料理屋と自分流の違い/天ぷらの手順/ピクルスのかわりにラッキョウ/人参がさっと切れる包丁/「なにさ、あの大根女優!」/ひと味違うご飯の炊き方/おひつと炊飯器/台所こそわがお城
 
第四章 すてがたい和風の暮らし
着物の魅力と着付け/着物は楽に着ること/自分の姿を決めるのは、自分の目と頭/再生(リフォーム)のタイミング/着物を買うとき/着物の粋/礼装は目立たないこと/着物と下着の組み合わせ/着物への心くばり/着物の主役はあなた/着物のぜいたく/後始末も着付けのうち
 
第五章 女優生活五十年
「浅草」から教わること/「沢村さんって、怖い人」/「おせっかい」と言われても/私の発散法/私は陽気な世話女房/「仕事と家庭」という分け方/「きれい」と言われる秘訣/自分に似合うものをみつける/「女のくせに」/「男のくせに」/男と女のあいだ/「家事嫌い」は当たり前/晩のおかずだけは秘密/「出ずるを量って入るを制す」/「一生もの」のおつき合い/魚屋さんに教えられる/仕事をした分だけで暮らす
 
第六章 年齢に応じた生き方
嫁と姑の関係/しなやかに聡明に/暮らしはやめられない/私は不完全主義者/大げさに舞わない/「ほんのちょっとだけ」/年齢と遊ぶ/あと何回食事ができるか?/手入れしながら生きる/私にとって生きがいとは/「一センチ五ミリ」感覚/夫と二人の「ボケない会」/マージャンのすすめ/「昔はこうだった……」/いい「骨董」になる/これからも甘えない?/対話のきっかけになりますよう
 
あとがき