『散歩のときに何か食べたくなって』(池波正太郎/新潮文庫) ― 古き良き名店ガイド
こんばんは、扇町みつるです。少しお久しぶりになってしまいました。
大嫌いな健康診断があったからです。何とか無事終えました。
さて、『中世史講義』を「東大読書」のやり方で少しずつ読んでいましたが、ちょっと息抜きに『散歩のときに何か食べたくなって』(池波正太郎/新潮文庫)を読みました。
各地の名店ズラリ
池波正太郎は、行きつけの店についてエッセイで結構書いています。これまで読んだものでは、都内の行きつけや大阪・京都などの関西方面が中心でしたが、本書ではそれにとどまらず横浜や名古屋、滋賀、信州など幅広く書かれています。
作家さんて部屋に篭ってずーっと原稿用紙と向き合っているイメージが強かったのですが、池波正太郎は本当に色んな所に出かけていて、それで作品を書き上げるというのは凄いなぁと思いました。
いや、色んな所に出かけるからこそ、刺激を受け作品が生まれる、のかもしれませんね。
江戸時代の残り香
本当に色んな所で色んな店に入っていますが、共通しているのは昔の香りが残っているお店です。
昔から変わらぬ店構えや座敷、横浜だったら異国情緒溢れる店内、そして店員の仕事に対する真摯な姿勢。そういうものが残っているお店が池波正太郎にとっての名店なのでしょう。無論、料理が美味しいのは当然ですが。
このエッセイは私が生まれた頃に書かれたようです。ざっくり言って40年程前になります。その時点で、東京の変貌を嘆いておられました。京都についても、その更に10年程前の段階で”古き良き京都を見られるのは今のうち”と思っていたようです。
変貌のターニングポイントとして東京オリンピックが挙げられています。東京は、関東大震災や戦争で町並みはかなり変わったと思いますが、戦前かろうじて残っていた江戸の香りが戦争でほぼ無くなり、東京オリンピックで江戸時代からあった掘割を埋め立てたりビルを建てたりしたあたりでトドメが刺されたのでしょう。
現在の、ショッピングモールやシネコンが乱立している都内を見たら何と評するでしょうね。
それに近いことが書かれていますので、興味あったらぜひ。
Amazonプライム会員は送料無料!