『天皇の影法師』(猪瀬直樹/中公文庫) ― 影法師に翻弄された人たち
天皇の葬儀、新天皇即位に翻弄された人たち
テレビでいつだったか八瀬童子のことをやっていたことがあり、非常に興味が湧き、本書のことも知りました。
まるまる一冊八瀬童子のことと思いきや、八瀬童子エピソードの割合はそんなに多くありません。
メインはむしろ昭和になる際にあった元号誤報事件や、元号制定の裏側、終戦時に松江で起きた県庁焼き討ち事件です。
てっきり小説だと思い込んでいたのですが、ドキュメンタリーでした。
元号に関する報道をする記者の人たちも、元号の制定に携わった人たちも、そして太平洋戦争の敗戦を受け入れられずテロにおよんだ人たちも、八瀬童子の方たちも、天皇本人に会ったわけではありません。
どの人たちも実際の天皇ではなく、影法師のような幻影に翻弄されたのだと思います。天皇個人というよりも、元号も含めた”天皇制”というシステムに翻弄されたと言うべきでしょうか。
もうすぐ新たな元号に切り替わろうとする中、時代の移り変わりや人々の生活スタイルの変化によって、元号の必要性に疑問が出てきています。
そんな今だからこそ、本書を読み元号や天皇制について考えてみても良いのかもしれません。
ちなみに私は、院政期好きということもあり、自分が生きる世に上皇が現れることが嬉しいです。
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目次
プロローグ
天皇崩御の朝に
柩をかつぐ
元号に賭ける
恩赦のいたずら
エピローグ