みつるの読書部屋

いのち短し読書せよ大人!

『牛車で行こう!』(京樂真帆子/吉川弘文館) ― 牛車に乗って出かけよう

こんばんは、扇町みつるです。

私の推し

私には推しがいます。生きていれば来年900歳になります。そんな彼が日常乗っていたのが牛車です。

牛車というと、今は博物館とかでしか見られないですよね。牛が実際引いているところとなると、京都のお祭りくらいではないでしょうか。

 「牛車で行こう!」

そんな牛車について書かれた本が『牛車で行こう!』(京楽真帆子/吉川弘文館)です。

私達の生活からはすっかり遠い存在となった牛車ですが、1000年前くらいには実際貴族の乗り物として活躍していました。

 

本書では、牛車の車種、それぞれに乗車可能な身分、乗車や降車の作法、車の図解説明、牛車に乗れる場所、徒歩じゃないといけない場所、などなど、牛車についての様々な事柄が平安時代の日記や物語を引用しながら書かれています。

 

たとえば、本書を読むまでは、牛車は一人しか乗れないものだと思っていたのですが、四人乗れるそうです。

しかも、車内での上座・下座がしっかり決まっていて、前後ならば前側が上座、左右ならば右側が上座。つまり、1前右、2前左、3後右、4後左、の順になっています。びっくりです。男性ならば袍や直衣、女性ならば十二単を着ていて結構幅を取りそうな感じがしますけれども、そんなに乗れたんですね。

 

このように、かなり細かいことまで書かれているので、これから『源氏物語』など平安時代の古典を読もうという方は、その前に本書を読んでみるとより物語世界に入れます。

牛車という結構ニッチなテーマですが、一般向けに書かれていてそんなに難しくないので、平安時代に馴染みがない方でも興味さえあれば十分楽しめます。

 

唐車か檳榔毛車に乗れるような人と結婚したいですわー(笑)

 

牛車で行こう!: 平安貴族と乗り物文化

牛車で行こう!: 平安貴族と乗り物文化

 

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目次

第一章 車を選ぼう
車種と身分・階層
牛車の身分規制
偽装する車/①素性を隠す/②身分を隠す
車の所有・貸与・相続
受領の牛車

第二章 牛車で行こう!
1 では、乗り込もう
牛車は後ろ乗り/牛車は四人乗り
2 車を走らせよう
牛車のスピード/車中の工夫/車を引く牛/移動の風景 ①川を渡る ②道を譲る

第三章 歩くか、乗るか?
1 歩く貴族
寺社参詣は徒歩で/徒歩移動すべき空間/歩きたくない、歩けない
2 輦車宣旨と牛車宣旨
輦車と腰輿 ①輦車 ②腰輿/中重の輦車宣旨/牛車宣旨

第四章 ミヤコを走る檳榔毛車
1 檳榔毛車とは何か?
2 檳榔毛車の作法
乗車の身分規制/檳榔の入手
3 ミヤコのなかの檳榔毛車
行列を飾る/物語世界への反映

第五章 一緒に乗って出かけよう!
1 女房たちの同車
職務の中での同車/いやなやつと乗り合わせた場合/上座・下座
2 同車に表れる人間関係
同車する人々/演出される同車
3 そして一緒にどこへ行くのか?
右京へ/西山へ/東へ/南へ

第六章 廃れたからこその牛車
1 廃れる乗車文化
2 牛車研究の金字塔『輿車図考』
松平定信」という文化人/『輿車図考』について
3 『源氏物語』の牛車
『源氏物語』にみえる車の種類/車の中の様子/「一つ車に乗る」人たち
あとがき