『いますぐ書け、の文章法』(堀井憲一郎/ちくま新書) ― 人のために書くということ
こんばんは、扇町みつるです。
文章を書く、とは?
みなさんは、普段文章を書いていますか?
おうちではブログや小説、仕事場では報告書や企画書など…。
プロの物書きじゃなくても、文章を書く場面は結構ありますが、それらを書くときに気をつけていることはありますか?
本書は、うまく文章を書きたくてもうまく書けない人に、こういうところの意識を変えるといいよと提示しています。
そもそも、の話
みなさんは、何のために文章を書いていますか?
仕事で書くものだったらもちろん仕事のためですが、たとえば、ブログの場合だと、記録として書いていたり、お出かけしたり何か作ったりしたことを広く紹介するために書いたり、あとはストレートにアフィリエイトのために書いたり(そして収益を得る)。
本書では、
読む人の立場で書け。
とまず述べています。
どんな人に向けて書くのか、どんな人に読んでもらい喜んでもらいたいのか。
そして、
いますぐ書け。
良い文章を書こうと、グダグダと資料を集めて辞書を熟読して頭のなかでこねくりまわす時間があるならば、自分の今持っている知識で今すぐ書けと。
ああ、耳が痛い。
私が今まさに、「書きたいと思っていることがあるけれど、良い文章を書くのに知識が圧倒的に足りないから、いつか書くときのためにいろんな本を読んで知識を蓄えよう」としているからです。
何を書きたいって、小説なんですけどね。
今のままでは、いつかは永遠に来ないと心のなかでは分かっているんです。
でも、書いたらその出来上がったものを読むとこっ恥ずかしくって身悶えしそうで怖いんです。
そんなことを考えていたら永遠に書けないということも、頭では分かっています。
本書で述べられていることは結構シンプルです。
・文章を書くのは、どこまでもサービスである
・文章を書くときに大事なのは、書いている者の立場を忘れて、読んでいる者の立場からだけ考えて書く
・文章を書くときに大事なのは、”誰に向かって書いているか”を明確に意識すること
・文章は、人を変えるために書かれないと意味がない
・文章は結論から書け。時間軸で書くな
・文章は自己を表現するものではない。自己が晒されるものでしかない
・文章は肉体の作業である。頭脳では制御しきれない
・書く前に考えていたことしか書けない文章は失敗である
・リアルな読み手を設定すること
いくつかありますけど、著者が一番強調しているのは一番目(二番目も大体同じ意味)です。
読み手の立場に立って書け、これです。
著者は主に雑誌のコラムなどを書いているそうなんですが、これは雑誌の記事に限らず、小説などの物語やその他いろいろな文章に通じることです。
私が今文章を書いている場としては、やはりこのブログなんですが、やはり「自己表現」という意識はついて回ってしまっていますし、誰に向かって書いているかという意識は正直ほとんどイメージしていません。
強いて言うならば、検索などでこのブログにたどりついた方や、読者登録して下さっている方、です。
しかし、男か女か、何歳くらいか、など具体的にイメージをして書いているかというと、正直に言えばNOです。
このようなブログを書くにあたり、そういうイメージをどこまで設定するのかについては、雑誌記事を書く前提とは異なっているところもあるかもしれませんが、たとえお金をもらっている記事ではなくても、文章を書いて公開する時には読み手がいることを意識するのはとても大事ですね。
たとえ趣味の範囲であっても、読み手あってのブログですから。
「文章は肉体の作業である」
これは感覚的に分かるというかうなずけます。小説を書いているときや、このブログを書いているとき、座って書いてはいるものの全身で書いている感覚があります。そして書き終えるとドッと疲れます。
要は、四の五の考えてないで書きたいことがあったら今持っている知識を使って今すぐ書け。
ということです。
本当にその通りだと思います。
文章ってどうしたらうまく書けるんだろう、そう悩んでいる方がいらしたら、突破口を開くことができるかもしれないのでぜひどうぞ。
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『中世史講義』(高橋典幸/五味文彦/ちくま新書) ― 苦手だった中世史を照らす光
こんばんは、扇町みつるです。
ちょっと時間がかかりましたが、やっと読み終わった『中世史講義』(高橋典幸/五味文彦/ちくま新書)。
とっつき辛かった日本中世史
日本史の中世の時代というと、皆さんは何が浮かぶでしょうか。
私は、武士、鎌倉幕府、守護地頭、鎌倉仏教、勘合符、蒙古襲来……。こんな感じでしょうか。
学生時代の日本史の授業では、源頼朝が鎌倉幕府を開いて(当時は大体このあたりからが中世)北条氏が実権を握り、蒙古が攻めてきて神風が吹き、守護地頭(このあたりでごちゃごちゃになる)が○△□◇…。テストで単語埋めるのがやっとでした。
何が分かり辛いかって、平安時代まで政治を行っていたのは朝廷だったのに対して鎌倉時代以降、つまり中世は武士が台頭して政治の実権を握り、統治の機構が複雑になったことです。
荘園制などの土地制度についても、もともとあまり得意じゃなかったところに、武士による統治が被さってきて、ごちゃごちゃになってしまったのですね。
学校で習う日本史のテストは基本的に単語や年表の暗記が中心だったので、覚えるべき単語がぐっと増えるのと、統治の制度が複雑化してきてボーっと授業を聞くだけでは私の頭では理解しづらくなってきたあたり、それが中世のあたりだったのです。
そういうことがあり、守護地頭、在地領主なんて言葉が並ぶと、「あー!訳わからんわー!」となってしまっていたのでした。
点から面へ誘った『中世史講義』
そんな私の中世史に対する認識ですが、その他は、大河ドラマのイメージというか記憶ですかね。「太平記」の高師直を演じていた柄本明さんや北条時頼を演じていた渡辺謙さん、北条時宗を演じていた和泉元彌さんが浮かびます。はい、それだけです。
武士、鎌倉幕府、守護地頭、鎌倉仏教、勘合符、蒙古襲来、柄本明、渡辺謙、和泉元彌。中世史で浮かぶものを挙げよと言われたらそれくらいしか浮かびません。
単語(点)でしか認識出来なかった程度だったのです。
そんな私がもう少し広いイメージ(面)が出来るようになりました。
カバーに書かれている、
平坦な歴史叙述ではなく、政治・経済・外交・社会・文化など十五の重要ポイントを押さえる形で中世史を俯瞰する。
の通り、様々な角度から掘り下げられていたので、全て何でも分かるようになったわけではないけれど、たとえば「鎌倉幕府」という単語だったら、鎌倉幕府がどんな流れで支配地域を広げていったかとか、「勘合符」だったら、室町幕府は具体的に明とどのように貿易をしたのかなどが、なんとなく見えたような気がします。
全体的には私の頭のレベルにはちょっと難しい本だったと思います。
でも、単語だけの認識しか出来なかった状態から、掘り下げてイメージ出来るようになっただけでも、本書を読んだ大きな収穫だったと思いました。
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